top of page

急性肺塞栓症

「エコノミークラス症候群」として有名、突然死の原因にも!

​急性肺塞栓症とは

急性肺塞栓症は、心臓から肺に血液を送る肺動脈に血栓が急に詰まるために起こります。

 

血栓は主に脚の静脈の中で血液が凝固して生じ(深部静脈血栓)、血液の流れに乗って心臓を経由して肺に詰まります(図1)。

 

大きな血栓が肺動脈を塞ぐと、酸素を血液に取り込めなくなったり、心臓から血液を押し出せなくなり、突然死の原因にもなることがあります。

 

これまでは欧米に多くみられる疾患でしたが、食事の欧米化などに伴って、わが国でも頻度が増加しています。

image032.jpg

 図1

原因

血液は流れが停滞すると凝固して血栓ができやすくなります。航空機などで長時間座っていて脚の血液がうっ滞し、血栓が生じて発症するエコノミークラス症候群が有名です。

 

また、大きな手術の後や重い病気で寝ている時間が長くなると発症しやすくなります。他にも遺伝、様々な疾患、薬剤、加齢などによっても血栓が出来やすくなります。

​急性肺塞栓症の症状

急性肺塞栓症の症状は、突然にはじまる息苦しさや胸痛で、重症例では失神、血圧低下をきたします。脚のむくみや痛みが先行することもあります。原因のほとんどが脚の静脈血栓ですが、肺動脈に詰まるまで脚の症状が出ない場合も少なくありません。

診断

造影剤を使ったCT検査で診断します(図2)。検査室に移動できないほど重症な場合には、心臓超音波検査を駆使して暫定診断します。

 

胸部造影CT検査にて両側主肺動脈にまたがる陰影欠損(血栓)が認められる(矢頭)。

image034.jpg

図2

治療

酸素吸入、薬物療法が基本です。

 

薬物療法では、まず血液が固まらないようにする抗凝固薬のヘパリンを点滴で使います。その後ワルファリンの内服に切り替えて、少なくとも数ヶ月、永続的な危険因子をもつ人はさらに長期間服用します。

重症の場合には、血栓を溶かす血栓溶解薬を投与して積極的に治療します(図3)。ただし、出血の副作用が出やすくなるため、慎重に適応を判断します。

救命のために、手術やカテーテルで血栓を直接取り除くこともあります。手術や薬物療法の効果が得られるまで、時間に余裕がない場合は、ベッドサイドで開始できる人工心肺装置を用いて循環と呼吸をサポートすることがあります。

 

出血などにより抗凝固薬が使用できない時には、脚の静脈から心臓に血液が戻る途中の下大静脈にフィルターを留置して、血流を保ちつつ肺動脈に血栓が流れ込むのを防ぐ方法もあります。

image036.jpg

図3

血栓溶解療法前後の肺動脈造影検査(上)と心臓超音波検査(下)画像:治療前には多発性血栓(矢印)が認められた(左上)。血栓溶解療法にて血栓は消失した(右上)。治療前の心臓超音波検査では、肺動脈に血液が送りづらくなった影響で右室が拡大(正常では右室よりも左室が大きい)(左下)。血栓溶解療法により右室への負荷が軽減し、右室の大きさは正常化した(右下)。

bottom of page