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​急性心不全

緊急循環器入院の重要疾患

​急性心不全とは

心不全は発症様式から、一般に急性心不全と慢性心不全に分類されます。

 

急性心不全は、急に息切れや呼吸困難が発症して、緊急入院を要することが多い病態です。

 

慢性心不全は、心臓の病気により心臓の機能低下が慢性的に存在し、日ごろから疲労感や階段を上るなどの日常生活での活動で息切れなどを生じる状態といえます。

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 図1;急性心不全の頻度 

東京CCU連絡協議会加盟施設では、緊急循環器入院を受け入れています。救急車による緊急入院の対象になるのは、主に急性心不全です。急性心不全は、東京CCU連絡協議会加盟施設での緊急循環器入院中30%以上を占めており、ほぼ急性心筋梗塞と並ぶ頻度で、その2011年度の死亡率は6%にのぼります。

 

慢性心不全の状態でも、十分な配慮のもとに安定した生活を営むことは可能ですが、風邪などの感染などに伴い慢性心不全の急性増悪をきたすことはしばしば認められます。慢性心不全の急性増悪による急性心不全の再発入院は、今後の大きな問題です。

原因

急性心不全の原因は、多様な基礎心疾患が原因になります。一つの原因のみでは説明がつかないこともあります。急性心不全発症のきっかけは、肺炎などの感染や身体的疲労、食生活変調による塩分摂取過多、高血圧などの薬の飲み忘れなどの身体的ストレスなどが多いです。

急に発症する急性心不全は、高血圧の方や高齢者に認められることが多く注意が必要です。

 

また、心臓弁膜症や心筋梗塞などのために心臓の筋肉に一部瘢痕を形成(陳旧性心筋梗塞)していたり、心臓の筋肉の病気で非常に厚くなったり、逆に薄くなったり、心臓の心室の形態異常により負担が増加したりする場合(心筋症)があります。

急性心不全の症状

急性心不全では、息切れや呼吸困難が主たる症状です。

 

呼吸困難が進むと意識障害や血圧低下に至ることもあります。最近出現した動悸や冷汗にも注意が必要です。原因の特定できない頻脈傾向も心臓の負担を表していることもあります。下肢のむくみも症状の一つです。日常生活で息切れが悪化し、歩行での息切れや階段が昇りにくくなることがあります。

 

日常生活運動で息切れが出るうちは早めの医療機関への相談で十分ですが、座っていて息切れがでるとか寝ると咳が出るなどは、心不全状態が悪化しつつあり、急激な症状の悪化をきたす可能性があります。                

図2;危険なサイン

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診断

緊急入院時は、採血検査、胸部X線写真、心電図、心エコー図検査などで初期診断します。緊急を要する不安定な状態では身体に負担のかからない検査が優先されます。必要時には心臓カテーテル検査も行われる場合もあります。

治療

酸素投与、点滴療法が基本になります。

 

点滴療法には、血管拡張薬投与で心臓の負担を減らす方法、利尿薬による利尿作用により循環血液量を減少させて心臓の負担を減らす方法、また強心薬により、心臓の収縮力を補助する方法があります。

 

緊急入院時には、呼吸困難が強いこともあり、酸素を口や鼻の近くから投与するだけでは不足で、人工呼吸器の使用が必要な場合があります。近年では気管の中に管を入れず、患者さんに負担の少ない人工呼吸補助装置も使用されます。

 

心臓の力が弱い場合には、大動脈内バルンパンピング(IABP)や体外心肺補助(PCPS)も併用されることもあります。腎機能低下が強く、尿が出ない場合には透析装置の併用も検討されます。

 

脈が遅く、それによる心拍出量の低下が問題になれば心臓ペーシング装置も使用されることがあります。大がかりな器具による身体への補助は効果も大きい半面、逆に副作用や合併症の大きさも大きくなりやすい傾向にあります。十分留意が必要となります。

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図3;非侵襲的陽圧換気用のマスク

急性心不全の予防のためのメッセージ

以上のように、さまざまな要因が絡み急性心不全は発症します。発症予防に関しましてまずお伝えすべきことは、急性心不全を発症したことのある方は、急性心不全の再発予備群ですので、内服などをきちんと管理することが必要です。

 

多くの方で感染を契機に急性心不全を発症していますので、感染予防が必要です。寒い季節に急性心不全の発症頻度が高いことが明らかになってういますので、特に注意が必要です。

 

心筋梗塞、弁膜症、心筋症など疾患で治療を受けついる方は、引き続きかかりつけの先生のご指示を受けてください。高血圧は、普段は症状は出にくいのですが、急性心不全の発症原因として非常に重要な疾患です。内服で安定化することが可能な疾患ですので、かかりつけの先生方と相談の上、治療をしてください。

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