都民の皆様へ

急に起こる心血管疾患

突然起こる心血管疾患について、疾患別にわかりやすく説明します。

 

◆ 急性心筋梗塞

◆ 狭心症

◆ 急性心不全

◆ 不整脈

◆ 急性肺塞栓症

◆ たこつぼ心筋症

 

狭心症

【概要】

 心臓は筋肉でできており、収縮と拡張をくり返してポンプのように全身の臓器に血液を送り出している臓器です。心臓は全身の臓器に血液を送るポンプです。そのため、血液の供給を心臓自身から受けています。心臓へ血流を供給する血管を冠動脈といい、心臓の表面を走っています。

狭心症とは、心臓を栄養している冠動脈が動脈硬化や血管攣縮(痙攣)により狭くなり、十分な量の酸素と栄養が心臓に運ばれなくなる病気です。そして血流が完全に途絶えてしまう急性心筋梗塞へと進行すると、その部位の筋肉が壊死してしまいます(壊死とは筋肉組織がダメージを受けて、死んでしまうことです)。一度壊死してしまった筋肉は元には戻りません。

 

      

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 動脈硬化の進展

 

【原因】

 動脈硬化とは動脈が固くなり弾性を失ってしまった状態です。この状態が続くと血管壁にコレステロールが溜まり、血の巡りを悪くしてしまいます。冠動脈で動脈硬化が進行すると、狭心症を生じます。

 現在、生活習慣病として知られている脂質異常・肥満・高血圧・糖尿病と、喫煙・遺伝などが動脈硬化を進めてしまう因子として挙げられます。        

【症状】

 胸の痛み(胸の真ん中あたりに締め付けられるような痛み)や、肩から腕にかけての痛みで発症することが多いですが、場合によっては、歯の浮くような症状や、お腹の痛みで起こることもあります。また、息苦しさや動悸症状を伴うこともあります。

 多くは朝方の出勤時に急いで歩いたり、坂道・階段を上った時に症状が起こり、少し休憩すると改善します。しかし、動脈硬化が進行して血管の狭窄が進んでくると、安静時にも症状を起こすようになります。

【診断】

  狭心症の診断には心電図、心臓超音波検査、心臓核医学検査、運動負荷心電図、冠動脈造影CT検査などの侵襲の少ない検査から行いっていきます。これらの検査から狭心症を疑う場合には、冠動脈造影検査(心臓カテーテル検査)を行います。冠動脈の狭窄をおこしている部位や狭窄の程度を確認・評価します。これは今後の治療の選択を行ううえで、重要な検査となります。

<冠動脈カテーテル検査>

 手首・肘・大腿部のいずれかを局所麻酔し、動脈にカテーテルと呼ばれる直径2mm程度の細い管を挿入します。それを大動脈にある、冠動脈の入口まで進め、造影剤を流して血管の狭窄または閉塞の部位・程度を評価します。

 

 

 

【治療】

 治療の目的は、冠動脈の狭窄にともなう心筋への血流不足を改善(血流の改善・増加)させることです。

 大きく分けると薬物治療、カテーテル治療と、冠動脈バイパス手術に分けられます。

<薬物治療>

 発作時にニトログリセリンの内服を行います。心臓の酸素消費を減らしたり、冠動脈を拡張する薬を用いて、心筋虚血(酸素不足)を防止し、胸痛の発生を予防します。

<冠動脈カテーテル治療>

 手首、肘、あるいは鼠径部(股の付け根)に局所麻酔を行います。そして直径2mm程度のカテーテルという細い管を冠動脈の入口に挿入します。ガイドワイヤーという細いワイヤーを冠動脈内に進めていき、狭窄部位をバルーンで拡張したり、ステント(金属の網状筒)で拡張した血管壁の内側を補強する治療法です。

 

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<冠動脈バイパス手術>

 一般的に行われている胸を開いて行う開胸手術のことです。胸や脚・腕・腹部から健康な血管の一部を採取します。そして血流が不足している冠動脈に繋いで、新たに血流を供給するバイパスを作成する手術です。

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急性心不全:緊急循環器入院の重要疾患 

【概要】

 心不全は発症様式から、一般に急性心不全と慢性心不全に分類されます。急性心不全は、急に息切れや呼吸困難が発症して、緊急入院を要することが多い病態です。慢性心不全は、心臓の病気により心臓の機能低下が慢性的に存在し、日ごろから疲労感や階段を上るなどの日常生活での活動で息切れなどを生じる状態といえます。

 東京CCU連絡協議会加盟施設では、緊急循環器入院を受け入れています。救急車による緊急入院の対象になるのは、主に急性心不全です。急性心不全は、東京CCU連絡協議会加盟施設での緊急循環器入院中30%以上を占めており、ほぼ急性心筋梗塞と並ぶ頻度で、その2011年度の死亡率は6%にのぼります。

 慢性心不全の状態でも、十分な配慮のもとに安定した生活を営むことは可能ですが、風邪などの感染などに伴い慢性心不全の急性増悪をきたすことはしばしば認められます。慢性心不全の急性増悪による    図1;急性心不全の頻度              急性心不全の再発入院は、今後の大きな問題です。                                                                                        

【原因】

 急性心不全の原因は、多様な基礎心疾患が原因になります。一つの原因のみでは説明がつかないこともあります。急性心不全発症のきっかけは、肺炎などの感染や身体的疲労、食生活変調による塩分摂取過多、高血圧などの薬の飲み忘れなどの身体的ストレスなどが多いです。

 急に発症する急性心不全は、高血圧の方や高齢者に認められることが多く注意が必要です。また、心臓弁膜症や心筋梗塞などのために心臓の筋肉に一部瘢痕を形成(陳旧性心筋梗塞)していたり、心臓の筋肉の病気で非常に厚くなったり、逆に薄くなったり、心臓の心室の形態異常により負担が増加したりする場合(心筋症)があります。

【症状】               

 急性心不全では、息切れや呼吸困難が主たる症状です。呼吸困難が進むと意識障害や血圧低下に至ることもあります。最近出現した動悸や冷汗にも注意が必要です。原因の特定できない頻脈傾向も心臓の負担を表していることもあります。下肢のむくみも症状の一つです。日常生活で息切れが悪化し、歩行での息切れや階段が昇りにくくなることがあります。日常生活運動で息切れが出るうちは早めの医療機関への相談で十分ですが、座ってい て息切れがでるとか寝ると咳      図2;危険なサイン          が出るなどは、心不全状態が悪化しつつあり、急激な症状                   の悪化をきたす可能性があります。                

【診断】

 緊急入院時は、採血検査、胸部X線写真、心電図、心エコー図検査などで初期診断します。緊急を要する不安定な状態では身体に負担のかからない検査が優先されます。必要時には心臓カテーテル検査も行われる場合もあります。

【治療】

 酸素投与、点滴療法が基本になります。点滴療法には、血管拡張薬投与で心臓の負担を減らす方法、利尿薬による利尿作用により循環血液量を減少させて心臓の負担を減らす方法、また強心薬により、心臓の収縮力を補助する方法があります。緊急入院時には、呼吸困難が強いこともあり、酸素を口や鼻の近くから投与するだけでは不足で、人工呼吸器の使用が必要な場合があります。近年では気管の中に管を入れず、患者さんに負担の少ない人工呼吸補助装置も使用されます()。心臓の力が弱い場合には、大動脈内バルンパンピング(IABP)や体外心肺補助(PCPS)も併用されることもあります。腎機能低下が強く、尿が出ない場合には透析装置の併用も検討されます。脈が遅く、それによる心拍出量の低下が問題になれば心臓ペーシング装置も使用されることがありま図3;非侵襲的陽圧       す。大がかりな器具による身体への補助は効果も大きい半面、逆に副作    換気用のマスク      用や合併症の大きさも大きくなりやすい傾向にあります。十分留意が必要となります。                                                         

急性心不全の予防のためのメッセージ

 以上のように、さまざまな要因が絡み急性心不全は発症します。発症予防に関しましてまずお伝えすべきことは、急性心不全を発症したことのある方は、急性心不全の再発予備群ですので、内服などをきちんと管理することが必要です。

 多くの方で感染を契機に急性心不全を発症していますので、感染予防が必要です。寒い季節に急性心不全の発症頻度が高いことが明らかになってういますので、特に注意が必要です。心筋梗塞、弁膜症、心筋症など疾患で治療を受けついる方は、引き続きかかりつけの先生のご指示を受けてください。高血圧は、普段は症状は出にくいのですが、急性心不全の発症原因として非常に重要な疾患です。内服で安定化することが可能な疾患ですので、かかりつけの先生方と相談の上、治療をしてください。

 

急性肺塞栓症

「エコノミークラス症候群」として有名、突然死の原因にも!

【概要】

心臓から肺に血液を送る肺動脈に血栓が急に詰まるために起こります。血栓は主に脚の静脈の中で血液が凝固して生じ(深部静脈血栓)、血液の流れに乗って心臓を経由して肺に詰まります(図1)。大きな血栓が肺動脈を塞ぐと、酸素を血液に取り込めなくなったり、心臓から血液を押し出せなくなり、突然死の原因にもなることがあります。これまでは欧米に多くみられる疾患でしたが、食事の欧米化などに伴って、わが国でも頻度が増加しています。

 

                         

  図1  

                  

【原因】

血液は流れが停滞すると凝固して血栓ができやすくなります。航空機などで長時間座っていて脚の血液がうっ滞し、血栓が生じて発症するエコノミークラス症候群が有名です。また、大きな手術の後や重い病気で寝ている時間が長くなると発症しやすくなります。他にも遺伝、様々な疾患、薬剤、加齢などによっても血栓が出来やすくなります。

【症状】

症状は、突然にはじまる息苦しさや胸痛で、重症例では失神、血圧低下をきたします。脚のむくみや痛みが先行することもあります。原因のほとんどが脚の静脈血栓ですが、肺動脈に詰まるまで脚の症状が出ない場合も少なくありません。

【診断】

造影剤を使ったCT検査で診断します(図2)。検査室に移動できないほど重症な場合には、心臓超音波検査を駆使して暫定診断します。

 

胸部造影CT検査にて両側主肺動脈にまたがる陰影欠損(血栓)が認められる(矢頭)。

                            

図2 

【治療】

酸素吸入、薬物療法が基本です。薬物療法では、まず血液が固まらないようにする抗凝固薬のヘパリンを点滴で使います。その後ワルファリンの内服に切り替えて、少なくとも数ヶ月、永続的な危険因子をもつ人はさらに長期間服用します。

重症の場合には、血栓を溶かす血栓溶解薬を投与して積極的に治療します(図3)。ただし、出血の副作用が出やすくなるため、慎重に適応を判断します。救命のために、手術やカテーテルで血栓を直接取り除くこともあります。手術や薬物療法の効果が得られるまで、時間に余裕がない場合は、ベッドサイドで開始できる人工心肺装置を用いて循環と呼吸をサポートすることがあります。出血などにより抗凝固薬が使用できない時には、脚の静脈から心臓に血液が戻る途中の下大静脈にフィルターを留置して、血流を保ちつつ肺動脈に血栓が流れ込むのを防ぐ方法もあります。

図3

血栓溶解療法前後の肺動脈造影検査(上)と心臓超音波検査(下)画像:治療前には多発性血栓(矢印)が認められた(左上)。血栓溶解療法にて血栓は消失した(右上)。治療前の心臓超音波検査では、肺動脈に血液が送りづらくなった影響で右室が拡大(正常では右室よりも左室が大きい)(左下)。血栓溶解療法により右室への負荷が軽減し、右室の大きさは正常化した(右下)。

 

 

たこつぼ心筋症

「心筋症」というのは、何らかの原因(あるいは原因不明のこともあります)で心臓の筋肉の働きが悪くなった状態を示します。

そのタイプによって、拡張型、肥大型、拘束型と大きく3種類に分類することができます。それ以外にも様々な心筋症は存在します。

その中で、たこつぼ心筋症は日本で発見された特異な心筋症で、近年話題を集めています。たこつぼはご存じのように猟師が海で取れたタコを収納する日本古来の容器で、図1のような形をしています。

今までなんともなかった元気な人が急に胸の痛み、息苦しさ    図1.蛸壷               などを訴えて病院に運ばれてこの病気が見つかることがあります。特徴的なのは多くの場合、痛み・悲しみ・手術・サプライズなど引き金があることです。

心電図では急性心筋梗塞に似た変化を起こし、しばしば間違えられることがあります。図2は左室造影検査という心臓カテーテル検査で造影剤を左心室に入れてその動きをとらえる検査ですが、右側の写真のようにたこつぼに似た形を示すのが特徴です。

CCUネットワーク事業では2010年よりたこつぼ心筋症の患者さんの情報収集に着手し、2012年までの3年間で368人の患者さんがいることを確認しています。この病気は女性に圧倒的に多いのですが、男性の方が重症化しやすいことなどがわかっています。通常は跡形なく治りますが、まれに再発することもあります。時に重症の経過を辿ることもありますので、思い当たる症状が出た場合は、遅れることなく救急要請していただくようお願いします。


図2.たこつぼ心筋症の左室造影像

                 拡張期                    収縮期

             文責)CCUネットワーク学術委員会・たこつぼ心筋症研究班班長

                    吉川勉(榊原記念病院・副院長)

 

 

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